今回は、 五木田 雅彦さんより長年の人事業務経験でご自身が感じた「キャリアに目覚める瞬間」についてのコラムをご寄稿頂きましたので、掲載いたします。
チェ・ゲバラ。ご存知でしょうか。
彼の職業は革命家。1950年代から60年代にかけてキューバや中南米で抑圧されていた民衆のために銃を取って体制側と戦った“ヒーロー”です。
彼の若き日を描いた映画「モーターサイクル ダイアリーズ」はご覧になったことはありますか?
アルゼンチン・ブエノスアイレスの医学生だったエルネスト(のちのチェ・ゲバラ)は先輩と2人で、おんぼろモーターバイクにまたがり南米大陸12000km縦断旅行に出発します。
エルネストはこの旅のあちこちで虐げられた人々、アンデスの銅鉱山で過酷な生活を強いられている先住民族たち、アマゾンの奥地で隔離されたハンセン病患者などに出会います。
自分が知らなかった世界、知らなかった人々の話を聴き、触れ合い、時には葛藤するような経験を積み重ねていきます。
自らの進路を漠然と医師になるとしか考えていなかったエルネストの“魂”はこうして磨かれていきます。
私が一番感動を覚えたシーン。
アマゾン奥地のハンセン病患者を収容する病院で医師たちに請われ、エルネストたちはボランティア活動をします。
予定期間が終わり明日は出発という前日、病院の医師やスタッフたちはエルネストたちの慰労会を開いてくれます。
そのさなか、エルネストは突然そのパーティーを抜け出し、目の前の濁流を必死に泳いで対岸の病棟にいる患者たちに別れを告げに行きます。
「自分はこちらではなく、対岸の人々とともにいるべきなのだ」と。
このあとエルネスト青年はチェ・ゲバラとしてのキャリア、人生を歩み始めます。
突然の悟り?こんな瞬間、みなさんは経験したことはありませんか?
私も大学生のころ海外の衝撃的なニュース映像を見て海外特派ジャーナリストになりたいと何か啓示を受けたようなあの瞬間を思い出しました…。
若い人からのキャリア相談でよく出てくる悩みは、自分が何に向いているのかわからない、やりたいことは特にない、親が公務員になればと言っているがそれでいいのか、などの話です。
思えば私も大学を出たらどこか安定した会社に入っておけばまずは安心くらいしか考えていなかったことを思い出します。
しかし私が若い人たちに伝えたいことは、今はまだ自分がやりたいこと、何が向いているかわからなくても、自分の道は自分の思いで決めていくという覚悟をまずは持つこと。
そしてとりあえずでもいいからまずは自分が選んだ道を歩み始めること。
そうすれば、エルネストのようにあるとき突然、自分の行くべき道が見えてくる。
そしてその日が来るまでは焦らずにいろいろな経験を積み重ねていくこと…。
私は海外特派員になる夢は果たせませんでしたが、海外で働きたいという想いを持ち続けた結果、40歳から経済成長著しい中国へ駐在員として派遣され、以後12年にわたって自分のやりたい仕事をすることができました。
さて皆様はいかがお考えでしょうか?
キャリアコンサルタント 五木田雅彦
コラム著者